夜だから Night, Because
(C)MONOCEROS
エリカは東京でプロのダンサーをしている。 ある夜、エリカのステージに一人の女が乱入した。 女は刃物を振り回し、エリカを傷つける。 取り押さえられた女の顔を見て、エリカは息をのむ。 それはエリカの不倫相手である振付師の妻だった。
事件をきっかけにステージに立てなくなったエリカは、 心と体を癒すように、天橋立のある京都宮津へ身を寄せる。 イザナギがイザナミと交わった天浮橋が地上に落ちて、 天橋立になったと伝わる場所…
神秘に包まれた風光明媚な景色は、エリカの心に安らぎを与えてくれるが 彼女の自己破壊的な衝動は消えることがなく、孤独を紛らわせるように 酒におぼれ、自堕落な暮らしへ陥っていく。
そんなエリカを救ったのは、地元で肉体労働をしている男、タイチであった。 始まりこそ衝動的な体の関係だった二人。 だが武骨で優しいタイチに、エリカは少しずつ心を開いていく。 タイチもまた、ぎこちなくエリカに尽くした。 タイチの家で同棲生活を始めた二人は、心と体を重ねる蜜月を過ごす。やがてエリカは知る。 タイチもまた心に深い傷を負った男だということを。 タイチは自殺で妻を亡くしていたのだ。
エリカとタイチが心を開けば開くほど、死んだ妻の幻影は 二人を苛み始める。エリカは死んだ妻の幻影に悩まされ、 タイチもまた、封印したはずの過去に 足元を揺さぶられて、ついには二人揃って心が壊れていく。 お互いの魂をぶつけ合うように、激しく体を求め合う二人。
夜に出会った二人は、死んだ女に導かれるように、死の世界へと魅了されていく。 長い夜の彷徨の果てに、エリカはある決断を下す。 生きていくための決断を。